この度、biscuit gallery karuizawaでは2024年7月6日(土)より、開廊1周年を記念して、品川亮による個展を開催致します。

会期初日にあたります、2024年7月6日(土)、個展開催記念のトークイベントを開催致します。
品川亮の対談相手として、日本美術史学者で「コバチュウ先生」としてもおなじみの小林忠氏をお招きし、浮世絵から現代までの日本美術、日本絵画について、たっぷりとお話し頂こうと思います。なお、本イベントのモデレーターとして、美術手帖総編集長の岩渕貞哉氏にご参加頂くことになりました。

品川亮個展 前期展「Hello-Goodbye」メインビジュアル
当日の様子は、以下よりご覧いただけます。
biscuit gallery karuizawa 開廊1周年記念:品川亮 個展 特別トークイベント
登壇者:
• 品川 亮(作家)
• 小林 忠(日本美術史家・岡田美術館館長)
• 岩渕 貞哉(『美術手帖』総編集長/モデレーター)
トーク概要
新作への挑戦
岩渕: 今回は品川さんのたってのご希望で、日本美術史が専門の小林忠さんにお越しいただきました。今回の新作個展「Hello Goodbye / Hello Again」では、初めての写真作品や映像作品など、新しい展開に驚かれた方も多いかと思います。まずは品川さんから作品についてお話しいただけますか。
品川: 僕は普段、伝統的な画材を使って主に植物を描いています。でも、同じものだけを書き続けたいわけではありません。環境が変化する中で、「今自分が何を描きたいのか」を丁寧に考えて表現することが、死ぬまで絵を辞めないために大事だと思っています。 今回の個展では、今一番自分の中で熱いことに挑戦しました。これまでの絵画と今回の写真や抽象表現は、「1本の木の異なる枝」のようなものです。ベースは同じ一本の木ですが、ある枝には花が咲き、ある枝は写真であるというように、僕の中ではすべて一貫した「品川亮」の表現です。
イタリアでの原体験
品川: 高校で油絵を学び、20歳でイタリアへ渡ってルネサンス絵画に触れましたが、自分にとってよりリアリティのある絵を求め、日本画を学び始めました。2012年、ベネチア・ビエンナーレでアシスタントをした際、「自分の考えている日本画」と「世界のアート」のルールの違いに衝撃を受けました。 日本に帰国し、お寺の絵画や掛け軸の素晴らしさを再認識する中で、江戸時代までの画材を使いつつ、現代の表現(コンテンポラリー・ペインティング)が可能かという探求を始めました。
三十三間堂から着想した「間と奥行き」
品川: 僕は描いている部分と、背景(金箔など)は全く対等だと考えています。
例えば三十三間堂は、34本の柱によって作られる33個の「間(ま)」を名前にしています。見えないものを存在させる考え方です。 日本人はこの「間」を横の次元で捉えてきましたが、僕は「手前と奥」という縦の次元(奥行き)で表現したいと考えました。絵具を塗って乾く前に剥がし、再度つけるという彫刻的なプロセスにより、平面の中に概念的な奥行きを作り出しています。また、背景に金箔を全画面に貼るのは、鑑賞者を映り込ませるためです,。その瞬間の臨場感や自分の影を含めることで、絵画を「自分ごと」として没入できる装置にしたいと考えています。
写真作品における「確実な不在」のレイヤー
品川: 今回出品した写真は、絵画と同じアプローチで作っています。フィルムで撮った写真をB2サイズに出力し、1メートル離れて再度撮影するプロセスを10回繰り返しました。最終的な1枚には、可視化されてはいませんが、11メートルの空間と10枚のフィルムという「間」が確実に存在しています。 モチーフは灯台や海です。海は何かを隔てる「仕切り」の象徴であり、三十三間堂の柱のような役割を果たしています。タイトル「Hello Goodbye」も、こうした物事の仕切りを意味しています。
小林忠氏が語る「江戸の精神」と品川作品
小林: 江戸時代は、権力のない庶民が情熱を持って素晴らしい文化を作った時代です。
昨日、品川さんからiPadで30〜40分も美術講義を受けましたが、彼はまさに江戸の絵師たちと同じように、表現したくてたまらない情熱を持った人だと感じました。 驚いたのは、彼がアシスタント任せにせず、自分自身で金箔を貼り、岩絵具を調整し、責任を持って制作している点です,。彼の「必触(筆の跡)」には、平面の中に時間差や数次元を表現しようとする面白さがあります。
江戸時代には、扇屋からスタートして価値を認められた俵屋宗達のような「アートの革命児」がいました,。品川さんも、海外へ行ったことで逆に「日本」を意識するようになったという点で、江戸の巨匠たちに通じるものがあります。
現代美術の文脈(リヒター、村上隆)への回答
岩渕: ゲルハルト・リヒターのレイヤー構造を彷彿とさせますが、意識されていますか?
品川: リヒターは勉強しましたが、彼の作品には美術史を証明するための「冷たさ」を感じることもあります。僕はもっと自分の記憶や思い入れといった「愛」がある表現を目指したいと思っています,。
質問者: 村上隆さんについてはどう思われますか?
品川: 彼の本はバイブルのように読み、現代美術を学びました。彼は日本のネガティブな側面(敗戦、オタク文化)を戦略的に使いましたが、僕は金箔の美しさや掛け軸の便利さといった「ポジティブな側面」から新しい絵画を作っていきたいと考えています。
300年残る表現を求めて
品川: 写真作品の「真ん中が明るく周囲が暗い」現象は、ハーフカメラを10回重ねる中で意図せず生まれたものですが、非常に美しいと感じています。 僕は、200年後、300年後に「俵屋宗達、伊藤若冲、そして品川亮もすごい」と言われるような作品を、時代に捉われず残していきたいです。日本美術の「分かりにくさ」は「遊び」の幅であり、豊かさです。その「余白」を楽しめる人間でありたいと思っています。
概要
品川亮個展 特別トークイベント
作家:品川亮
ゲスト:小林忠(日本美術史学者)
モデレーター:岩渕貞哉(美術手帖総編集長)
※敬称略
会場:biscuit gallery karuizawa
日時:2024年7月6日(土)11:00〜11:45
参加人数:約15名 ※抽選制
参加者プロフィール
品川亮|Ryo Shinagawa

画家。1987年生まれ、大阪府出身。
京都を拠点に活動。 東洋の絵画、文化的な歴史を再考しながら、
主な個展に「Re:Action」 (福田美術館パノラマギャラリー / 京都)、「RYO SHINAGAWA」 (Eslite Gallery / 台北)、「LANDSCAPE」 (OIL by 美術手帖 ギャラリー / 東京)など。また、建仁寺 両足院、天霊山 松林院、タイガー魔法瓶株式会社 (大阪) 、日本航空株式会社 (東京)など寺院や企業への作品制作も行う。
詳細プロフィール:https://www.shinagawa-ryo.com/cv
小林忠|Tadashi Kobayashi

1941年東京都生まれ。東京大学大学院修士課程修了。東京国立博物館絵画室員、名古屋大学助教授、学習院大学文学部教授、千葉市美術館館長などを歴任。現在、学習院大学名誉教授、岡田美術館館長、國華社顧問、国際浮世絵学会名誉会長。瑞宝中綬章受勲。
主要著書に「江戸絵画史論」(サントリー学芸賞)、「江戸浮世絵を読む」(ちくま新書)、「伊藤若冲」(新潮日本美術文庫)、「日本水墨画全史」(講談社学術文庫)、「光琳、富士を描く!」(小学館)。
モデレータープロフィール
岩渕貞哉|Teiya Iwabuchi

「美術手帖」総編集長。1975年生まれ。1999年慶応義塾大学経済学部卒業。2008年に編集長となり、2019年より現職。ウェブ版「美術手帖」やアートECサイト「OIL by 美術手帖」を立ち上げる。また、公募展の審査員やトークイベントの出演など、幅広い場面でアートシーンに関わる。
開催概要
biscuit gallery karuizawa 1周年記念
品川亮個展 特別トークイベント
日時:2024年7月6日(土) 11:00〜11:45
会場:biscuit gallery karuizawa
定員:約15名 ※抽選制
入場:無料
主催:biscuit gallery karuizawa



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